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ソフトウェア工学の基礎 28 を読んだ(その1)

nextpublishing.jp

この書籍は、2021年12月に開催された第28回ソフトウェア工学の基礎ワークショップ (FOSE2021)の予稿集である。

久しぶりにソフトウェア工学の論文が読みたくなったのと、最近どんな研究が行われているのか知りたくなったので購入した。

今回読んだのは「ユーザーレビューにおける地域・アプリケーション固有の苦情傾向に関する調査」という論文。

日・英・米3地域で展開しているスマホアプリに投稿されたユーザーレビューを対象に、アプリ固有、地域固有、各評価帯(例:星の数)での苦情の中身を分析したというもの。

 

分析結果としては

  • 低評価では「機能エラー」に関する苦情を抱えたレビューが多く存在する
  • 高評価になるほど「機能要求」などの提言となるレビューが増える

が地域共通の苦情の傾向として見られた、とのこと。

また、

  • 日英の苦情の書き方は比較的穏当である(「魅力がない」など漠然としたレビューが多い)が、米国では具体的なコメントとその理由が明確に示される傾向があった
  • アプリ共通の苦情がある一方、各アプリ固有の苦情の種類もあった

とのこと。

特に自分が面白いと思ったのは、↓↓の結果:

米国向けの場合は機能要求としてチャレンジすることが求められる傾向,日本向けには,「応答しない」や「強制終了」が発生しないように,安定性が求められる傾向があると考えられる.

地域ごとにユーザーが求める品質特性が異なるということだと思うのだが、これはアプリを複数国にまたがって展開する際に重要な情報だと思う。

あと、これは自分が研究者だったら、、という話だが、ユーザーレビューを通してソフトウェアの品質を評価する手法があったら面白いだろうなと思った。

余談だが、世界各地域におけるモバイルアプリユーザーの振る舞い(user behaviour)の違いと特徴を分析した研究としては、ちょっと昔のものだが以下の論文がオススメ(日本も分析対象に含まれている):

www.researchgate.net